先月の7月14日はフランス人にとって大切な祝日「革命記念日(パリ祭)」でした。
前日の13日には、なぜか各区の消防署でダンスパーティーの開催が前夜祭の慣例となっているそうで、ラボ近くの消防署からも大音量のダンスミュージックが鳴り響き、お祭りムードが盛り上がっていきます。当日の14日の午前中は、凱旋門からコンコルド広場までの至るところで交通規制が敷かれ、街が厳戒態勢に包まれる中、軍事パレードがシャンゼリゼ大通りで開催されました。お祭りは、日没後にエッフェル塔のそばから盛大に打ち上げられた花火で締めくくられました。

この花火がバカンスの幕開けの号令であるかのように、パリジャン・パリジェンヌたちはこの日を境にパリをあとにします。住宅街は徐々にひっそりとしていきますが、観光名所やセーヌ川のほとりは世界中からやってきた観光客であふれています。セーヌ川の右岸に期間限定でお目見えした夏の風物詩「パリ・プラージュ(=パリの浜辺)」も大人気。ビーチに大変身したセーヌ川岸で、寝そべったり本を読んだり、都会で束の間のバカンス気分を満喫している人々の姿が印象的でした。

さてラボでは、そんな夏のバカンスムードをよそに、ひと足早く秋モードのスイッチを入れて、秋のデザートの開発に追い込みをかける毎日です。今回はその開発舞台裏を紹介いたします。
アイデアを練る時は、膨大なレシピを見たり、ひたすら商品画像をインターネットで検索したり、スタッフにどう思う?と尋ねたり、情報収集から始めるシェフフェルデール。秋のデザートの構想も、日本で好まれる秋のフルーツや素材をスタッフと一緒に羅列しながら、まずはイメージを膨らませていきます。そのうちひとつは、フランスで「ポム・ダムール(=愛のりんご)」と呼ぶ「りんご飴」をイメージしたデザートを開発することになりました。
イメージが固まればすぐに試作開始です。引き伸ばしながら空気を練りこむことで艶を出した飴に、ポンプで空気を入れて、きれいな球形に膨らませます。膨らませる技術は繊細で難しく、空気の微調整が上手くいかないとすぐに破裂してしまうのですが、さすがはシェフフェルデール、鮮やかな手つきで飴を操るので見とれてしまいます。表面にほのかに色を付けた巨大なりんご型の飴の内側に、焼きりんごを丸ごと1個しのばせたデザートが形になりました。「見た目に驚きがある場合は、味は安心感のあるシンプルなものでいいんだよ」とシェフフェルデール。

ラボでは、試作品を光の射し込む窓際にサーブすることが完成した合図になっています。そこで日本へメールする写真を撮り、全員で試食し改善点を議論します。この日は、焼きりんごの上にオレンジソルベをのせて再試作することが決まりました。そしてその数日後、巨大なりんご型の飴を赤く色付けしているシェフフェルデールの姿がありました。「この間はあれがベストだと思ったけど、こっちの方がいいでしょ」とのこと。常に立ち止まらず、新たなアイデアを次々と試みる姿勢にトップパティシエのプロ意識を感じました。

秋のデザートについては、来月の話題でも取り上げます。乞うご期待!
(2011年8月)

