無農薬有機栽培によるビオ(オーガニック)製品は、パリでもだいぶ日常生活に浸透してきました。では、Protection Biologique et Intégrée(PBI)プロテクション・ビオロジック・エ・アンテグレという取り組みはご存知でしょうか? 日本語では「総合的病害虫管理」と呼ばれ、平成17年に農林水産省から実践指針が発表されています。
PBIは病害虫の管理方法のひとつで、70年代に提唱されました。病害虫を駆除するために、単純に農薬を使うのではなく、環境に応じて、土地を改善したり、機械や器具を駆使したり、有害虫の天敵の虫を使うなど、さまざまな対策を組み合わせます。「総合的」という名前が付いているのはこのためです。完全な無農薬栽培ではありませんが、農薬の使用を最小限に抑えた、環境に配慮した取り組みといえます。

フランス国内でトマトときゅうりを栽培する1000人以上の生産者が会員となっている生産者団体協会AOPn ( Association d’Organisations de producteurs Nationales « Tomates et Concombres de France »)は、温室栽培の基準としてPBIを義務づけています。「約20年前から、有害虫を食べてくれる虫を導入するなどして、取り組んでいます」と、ピエール・ディオ会長。主に、有害虫を食べるテントウムシや、有害虫の卵に寄生するハチなどを活用しているそうです。この取り組みによって、95%もの農薬量が減り、水の消費量も半分に減少。将来的には、農薬の使用ゼロを目標にしています。

ちなみに、フランスでのテントウムシの俗称は、bête à bon Dieu=神様の虫。漢字で書けば「天道虫」。中世時代には、幸運を呼ぶ虫、とも呼ばれていたそう。環境問題がますます深刻化する現代、テントウムシが人間のために果たしてくれる役割は、もっともっと大きくなっていくのかもしれません。文字通り、天からの使者といえるでしょう。
また、ハチのなかでもミツバチは、有害虫の天敵としてだけではなく、受粉を助ける役割も持っています。ミツバチによる受粉は、風の流れに頼ったり、人の手で行うよりも確実な方法なのです。トマトのほか、アプリコット、桃、メロン、アーモンド、キウイなど、さまざまなフルーツや野菜の栽培者も、養蜂家にミツバチの“出動“を依頼。今やミツバチはフランスの農場で大活躍しています。

こうした工夫や取り組みをしながら、消費者が安心して食べられる食品の質が守られています。さらにAOPnは、フランス産の生鮮食品の安全性をアピールしたいと、6月18日、パリ市内で、トマトときゅうりの無料配布を実施しました。農薬の使用量を抑えたPBIへの取り組みのほか商品表示によって生産者までさかのぼれるトレーサビリティーの徹底、温室から売場まで48時間以内に配送、きゅうりの保存温度は12~15度で質を保持、手が触れる作業を最小限に抑えるなどして、品質と新鮮さを保証しているそう。
フランス産のトマトは春から秋までが旬。冬になるとスペインやモロッコのトマトが、店頭に並びます。いくつもの実が枝でつながった枝付きトマトtomate grappe、ゴツゴツと大きく、縦に筋が入った“牛の心臓”cœur de bœuf、 加熱する料理に向いている細長いトマトtomate Allongéeなどなど、日本ではあまり見かけない種類もたくさんあります。
フランスでは6月から7月が旬のきゅうりは、直径およそ5cm、長さ30cmと、日本のものに比べて、とにかく太くて、大きい! 最近では“ベビー”という名前の、長さ25cm以下のきゅうりも発売されています。
トマトは、そのままかぶりついたり、トマトソースや煮込み料理にしたり…。きゅうりはサラダに入れたり、ヨーグルトのソースを付けたり、冷たいスープにしたり…。旬の間に、大いに楽しみたいものですね。
〈文・三富千秋/フランス パリ在住 2011年7月 〉

