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Lettre de Paris

「パリからの手紙」では、さまざまな角度からパリ「衣・食・住」情報を毎月お届けする予定です。

パリのベスト・フィナンシェ

フィガロスコープ美食審査会の舞台裏 その2

1月某日、火曜日の午後。
ラボで遅めの昼食をとっていたら、携帯にメールが入ったことを知らせる着信音が響きました。

-Bonjour Aki,
Figaro demande si c'est possible de faire une dégustation jeudi après midi. Je répond quoi?
(-ボンジュール、アキ。
フィガロが木曜日の午後に試食会をやりたいと言ってきてるんだけど。どう返事しようか?)

シェフフェルデールからです。 過去にもコラムで紹介させて頂いたことがありますが、この試食会とは新聞ル・フィガロ LE FIGAROの水曜版にはさみ込まれる情報誌フィガロスコープFigaroscopeの人気企画、レ・パルマレス・グルマン(美食審査会) Les palmarès gourmandsのこと。シェフフェルデールが審査委員長を務める会の取材会場はパリラボです。毎回テーマが面白く、パリラボスタッフも取材の邪魔をしない程度に試食にまぜてもらえ勉強になりますので、断る理由がありません。私はまぐれで受かったと言われる(それでも自慢の)仏検2級のフランス語を駆使し、日本語で入力する3倍以上の時間をかけてシェフフェルデールへSMSを返信します。

-Bonjour Chef,(以下間違いだらけのフランス語では社のイメージに関わりますので日本語で・・・)こちらは何も問題ありませんので、喜んで取材協力します。どうぞOKとお返事して下さい。それから開始時間とテーマを教えて頂けますか? -じゃあ、14時30分からということで。テーマは「フィナンシェ」、面白そうじゃない?

お、「フィナンシェ」といえば私たちアンリ・シャルパンティエの看板商品じゃないですか。そういえば私たちもパリのフィナンシェの水平試食はしたことがありません。それは非常に興味深いテーマで、とてもいい機会です。この試食会はいつも20店舗分の試食をすることが多いので、こう返してみました。

-それは本当ですか!じゃあ、試食の21番目のエントリーは「アンリ・シャルパンティエ」ということでお願いします!!!...? -いやー、読者がパリで購入できるものじゃないとダメだから。面白いアイデアだと思うけど。

・・・速攻で却下でした。まあ、何かの間違いでOKが出たとしても、48時間以内に日本からフィナンシェを取り寄せなければなりませんので現実的には無理な話だったのですが、アンリのフィナンシェをこの美食審査会のメンバーに試食してもらえば、どのような評価になるのだろうと想像がふくらんでいたので少し残念です。

審査会当日、木曜日。
シェフフェルデールが審査開始時間よりずいぶん早くラボへ来て、厨房で作業しています。焦がしバターの香りが漂ってきますので、フィナンシェの試作でも始めたのでしょうか・・・。そうこうするうち、リストアップされた18軒のパティスリーのフィナンシェを匿名で購入したフィガロスコープ誌のスタッフが続々と集まり、審査試食会が始まりました。いつもと同じく覆面レストラン批評家のS氏が進行を取り仕切り、1店舗ずつブラインドテイスティングを行い、採点とコメントをしていきます。

今回の審査は①見た目がおいしそうか②味③新鮮な商品か④コスト・パフォーマンスの4つの基準から行われ、それぞれ5点、合計20点満点で採点されて順位が決まります。後日、発売された誌面を見てみると、1位を獲ったのは昨年3月にオープンしたばかりの新星、パリ6区の「ユーゴー・エ・ヴィクトール Hugo & Victor」でした。他にも、見た目の点数が低くて総合3位でしたが、12区の「ブレ・シュクレ Le Blé Sucré」が味では実質的1位かも?と高評価を得ていました。結果はル・フィガロのWEB上でご覧頂けますので、ご興味を持たれた方はぜひご覧になって下さい。

さて、ブラインドテイスティングが終わって審査結果を集計しているとき、シェフフェルデールが厨房からテーブルへフィナンシェを持ってきました。焼き立てのようでふわっとバターの良い香りが広がります。

「これは参考まで、クリヨンのレシピと、それから取材協力してくれているアンリ・シャルパンティエのレシピ、2種類のフィナンシェを焼いたから、ちょっと皆さん味見してみて下さい!」

出ました!シェフフェルデールお得意のサプライズ。やっぱりさっきはフィナンシェを焼いていたんですね。審査委員の皆さんも、すでに18種類のフィナンシェを試食されているにも関わらず、良い香りに誘われてか次々と手が伸びます。そして「これは美味しい!」「クリストフ、こんなことしたら審査が滅茶苦茶になってしまう」と。クリヨンのレシピはヘーゼルナッツとバニラの香りに加え、粉糖を使用したことによる生地の口どけの良さに特長がありました。アンリのレシピはフランスのフィナンシェに比べ、生地をふんわり浮かせて焼き上げるその食感に特長を感じるということで、現代的な軽さと上々の評判でした。

スーパーパティシエの手による焼き立てフィナンシェ、という演出込みの大きなアドバンテージはありましたが、私たちのフィナンシェの味をパリのジャーナリストの方々にも評価してもらえたみたいで、大変嬉しい一日でした。

img02

※クリヨン シェフフェルデールが在籍していたパリ・コンコルド広場にあるパラスホテル「オテル・ド・クリヨン」のこと。彼は24歳の若さでシェフ・パティシエに抜擢され、以降15年にわたってシェフを務め、デセールの世界に革新をもたらせた。

(2011年2月)

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