フランスを代表する魚介類、牡蠣は、10月頃から3月までが旬といわれており、そろそろ「走り」が出回る頃です。しかし、すでに7月から旬が始まっていて、冬を待たずとも今でもおいしく食べられるのが、ムール貝Moules。ベルギー料理として知られていて、牡蠣に比べて存在が薄いですが、フランスでも多くのムール貝が養殖され、広く親しまれています。
代表的な養殖場のひとつがブルターニュ地方で、ユネスコの世界文化遺産に指定されている、モン・サン・ミッシェルの西側に広がるモン・サン・ミシェル湾一帯です。ワインやチーズなどと同様、「A.O.C.アー・オー・セー=Appellation d'Origine Contrôléeの略」(原産地呼称統制)と呼ばれる品質保証ラベルが与えられていて、魚介類では唯一A.O.C.を取得しているとのこと。スーパーマーケットなどには、ムール貝のパック詰めも売っていて、「A.O.C.Moule de bouchot de la baie du Mont St Michelモン・サン・ミシェル湾養殖場ムール貝」と書かれたシールが貼ってあります。もうひとつの有名な養殖場であるシャラント地方では、ムール貝に乾燥した松葉をかぶせて燃やすという、エクラードEcladeというおもしろい食べ方もあります。

もっとも代表的なムール貝の食べ方は、ムール・マリニエールMoules Marinières。エシャロットやパセリをバターでいためた後、ムール貝を入れ、白ワインで蒸したもので、フリットfrite=フライドポテトが添えられるのがお約束です。このセットはムール・フリットMoules friteと呼ばれ、1kg近い大量のムール貝が、鍋にどっさり盛られて登場。気どらず、豪快に食べたい料理です。

〈文・三富千秋/フランス パリ在住〉

