日本で“コメディアン”といえば、喜劇を演じる役者やお笑い芸人のことですが、フランス語のコメディアンcomédienは、喜劇や悲劇を問わず、主に舞台で活躍する俳優をさします。テレビや映画に出演している俳優は、男優をアクトゥールacteur、女優はアクトゥリスactriceと呼んで、両者を区別しています。舞台で主演するアクトゥールやアクトゥリスもたくさんいますが、演劇の勉強と訓練を積み重ねた舞台俳優コメディアンに対しては、みな敬意の念を抱いているようです。
もちろん、フランスにもお笑い芸人がたくさんいて、ユーモリストhumoristeと呼ばれます。テレビ番組で芸を披露したり、コメンテーターとして出演したり、さらには映画監督や俳優として活躍の場を広げている人も。しかし、芸人たちの実力が試されるのは、やはり舞台の上。しかも、たった一人で舞台に立ってコントを繰り広げるワンマン・ショーを行うことが多いのです。

会場は、劇場やコンサート会場、競技場など。人気のある芸人なら、サッカーのワールド・カップが行われるような大競技場も、連日、満席にしてしまいます。政治や社会現象を風刺するコントなど、シビアな現実を笑いに包み込んでしまう内容が多いのも、フランスのお笑いの特徴でしょう。

ちなみに、オペラ座(オペラ・ガルニエ)を含めると、パリには約140もの劇場があり、フランス人にとって劇場は身近な存在。地下鉄の駅のホームや町のあちこちに劇場の宣伝ポスターが貼ってあるほか、パリ市内の2カ所に、演劇のチケットを半額で販売するスタンドが常設されています。また、建物自体に歴史的な価値があり、中に入るだけでも意義がある劇場も少なくありません。さまざまな意味で劇場は、パリの重要なパトリモワーヌpatrimoine=文化遺産といえるのです。
〈文・三富千秋/フランス パリ在住〉


