先月「気候が良いのでカフェのテラスで原稿を書いてます(≒パリっぽくていいでしょ)」なんてことを書いたら罰が当たったんでしょうか、近頃のパリは暑さも湿気も例年をはるかに上回る猛暑が続いています。カフェのテラスなんか昼間は殺人的な日射し、冷房のきいたところへ行くとホッとするくらいですが・・・パリはそもそも夏は暑くないのが前提のようで、お店でもなんでも、空調完備のところを探すほうが難しいのです。弊ラボも事務所スペースには冷房がなく、チョコレート細工やパイ折りなど低温での作業が前提のキッチンにしか冷房を備えていませんので、ここのところ用事をつくってはキッチンに入り浸る毎日です。

さて夏を迎えると、パリでは楽しいイベントが続きます。まず夏至の日、6月21日には「Fête de la musique フェット・ド・ラ・ミュジック」というお祭りがあります。この日は路上からコンサートホールまでフランスのあらゆる場所で、プロ・アマ問わず、そしてジャンルも問わず音楽が奏でられ、まさに音楽であふれる一日、みな夜中まで大騒ぎします。それから6月の最終土曜日には「Marche des fiertés ゲイ・プライド」、セクシャルマイノリティの存在アピールのためのパレードが行われるのですが、ドラァグクイーンたちがテクノミュージックにのってノリノリで真昼間にパリの街を行進するパレードで、これがかなり楽しめます。そして7月14日は「Quatorze Juillet 7月14日革命記念日(パリ祭)」。午前中はシャンゼリゼ大通りで軍事パレード、夜はエッフェル塔そばでコンサートと花火大会、そして何故か各区の消防署でダンスパーティーが催され盛り上がります。そしてこの革命記念日を終えると、フランスは本格的に夏のバカンスが幕開けとなるのです。
フェット・ド・ラ・ミュジックで踊り、ゲイ・プライドで踊り、革命記念日のダンスパーティーで踊り・・・と夏は踊ってばかりのようですが、忘れずに夏のお菓子の話も。今回はまだこのコラムで取り上げていなかった新企画「パリ・ブランシェ」のことを紹介いたします。
「Paris Branché パリ・ブランシェ」とは「パリで今、流行の」という意味、少しくだけた表現ですが「パリで今、イケてる」という日本語のニュアンスがぴったりくる言葉です。過去22回続いたパリ・コレクションは、ファッション世界のパリコレがクリエイターの最新モードを発表する場であるように、基本的にシェフフェルデールのクリエイション(=創作菓子)を、春夏/秋冬の年2シーズンで発表してきました。それに対し、パリ・ブランシェはもう少し柔軟に、パリの今の空気みたいなものやパティスリーの世界での流行りものを積極的に取り入れて、コンテンポラリーな側面を打ち出そうという企画です。
記念すべき第1回目のテーマは「L’inspiration du citron 柑橘からのインスピレーション」、夏らしくレモンなどの香酸柑橘類(こうさんかんきつるい)をテーマとし、柑橘を用いた3種類のクラシックかつベーシックなフランス菓子をシェフフェルデールらしい表現で提案しています。今回のブランシェなポイントは、当コラムでも何度か取り上げた( vol.8、vol.12)「Classiques revisités クラシック・ルヴィジテ(伝統の再解釈)」という手法を用いていること。例えば「ゆずとオレンジのロール」でも、クラシックなロールケーキをカットの方法とデコレーションを変えて、まったく新しい見え方になるようにしていますし、味は昨年末からパリで流行の「ゆず」を取り入れ、こちらも今のパリの空気を感じて頂けるようにしています。
あと2種類のケーキも説明したいのですが、文字数が尽きてしまいました・・・。パリも暑い夏ですが、それを一瞬忘れさせてくれるような爽やかなケーキばかりです。ぜひぜひ一度、お召し上がりください!

(2010年7月)

