いよいよ夏を迎え、パリは1年でいちばん素晴らしい季節になりました。気温は30℃近くになる日もありますが、日本と違って湿気がないため、実に過ごしやすく気持ち良い気候です。私もパリに暮らして約2年、ラテンの人たちが働かない理由が少しずつわかるようになりました。パリの夏は短く、太陽を存分に、そして限りある人生を享楽的に楽しむためには、何か犠牲になることがあっても仕方ありません・・・仕事の優先順位はとりわけ低いのです。しかし私は日本人、この季節を楽しむ一方で仕事もしなければならず・・・。あまりに気持ちが良いので、遅めのランチをとるついでに、今回はノートパソコンをカフェのテラスに持ち出して、この原稿を書いています。私の記事は若干カタいので、これくらいの環境で書いた方が、まあ丁度いいのではないかと。
さて、今回は夏のデザートのことを紹介したいと思います。弊サイトでは紹介できていないのですが、アンリ・シャルパンティエの芦屋本店と銀座本店、日本橋髙島屋店のサロン・ド・テでは、シェフフェルデールが手掛ける新作デザートを提供しています。活躍の場がレシピブックやメディアが中心のシェフフェルデール、今や本国フランスでも彼のデザートを食べることは難しく、彼自身が「東京と芦屋でしか自分のクリエイトしたデザートを食べることができない、なんて魔法みたいだ」と言うくらいレアなものです。
いつもプロフィールでは紹介しておりますが、シェフフェルデールは、当時ミシュラン2ツ星だった「オテル・ドゥ・クリヨン」のシェフ・パティシエとして名声を確立したパティシエです。彼がシェフに就任した当時のレストランデザートは「シャリオ」と呼ばれるワゴンデザートが主流、要は作り置きされたケーキばかりの世界でした。シェフフェルデールはそこに料理的発想を持ち込み、パティシエのチームを編成し直し、温度差のあるデザートが完璧な状態で提供できるシステムを構築したのです。旬の果物ありきで発想し、その果物が持つ自然な甘さや香りを引き出すようにレシピを組み立て、一方同じ皿に、焼き立てのビスキュイやつくりたてのなめらかなアイスクリームを合わせ、ア・ラ・ミニュットで(オーダーが通ってからすぐに)仕上げて提供したのです。今や料理的発想がベースのデザートは少なくありませんが、それはまだ20代半ばだった若き日のクリストフ・フェルデールが創り上げてきたものなのです。そして当時の彼は「パラス※に君臨するデセールの改革者」と呼ばれていました。
冒頭に仕様もないことを書いたので、肝心の商品説明をする前に文字数が尽きてしまいました・・・後は駆け足で。今回はフランスの伝統的なデザートをシェフフェルデールの感性でコンテンポラリーに再構築する「Classiques revisités クラシック・ルヴィジテ」という手法を用いた3品です。しかも「ピーチ・メルバ」と「カフェ・リエジョワ」の2品については、私たち日本人が大好きなパフェ仕立てにしています。シェフも今回の仕上がりはいたくお気に入りの様子、「秋もクープ(パフェ)をやる!」と宣言していました。そんな自信作ですので、銀座・日本橋界隈、もしくは芦屋近辺へお立ち寄りの際は、ぜひお召し上がりくださいませ。
さて、いい具合に陽が落ちてきました。郷に入れば郷に従え、原稿はそろそろこの辺で、PCの電源を落としたら・・・もうビールを注文しても構わないですよね?アペリティフとともに、幸せな夏の夕暮れを楽しませて頂きます。
※パラス:フランスで超高級ホテルに与えられる称号。公式な格付け基準はないが、現在パリにパラスと認められるホテルはわずか7軒しか存在しない。ちなみにパラスの語義は「宮殿」で英語からきている。


(2010年6月)

