パリ北部にあるモンマルトルの丘は、昔から画家が集まる界隈として、パリで人気の観光スポットのひとつ。「丘」というくらいですから、坂道や階段が多いことでも知られています。モンマルトルをはじめとして、パリは坂道や丘が多い街なのです。パリでもっとも標高が高い場所は、20区のテレグラフ通り40番地の148.48m。続いてモンマルトルの丘にあるモンマルトル墓地で131m、ベルヴィル通りの中間点あたりの128m、メニルモンタンの108m、ビュット・ショーモン公園の103mなどと続き、すべてパリ北東部のセーヌ川右岸に集中しています。

パリの南部にあたるセーヌ川左岸をみると、モンスーリ公園付近の78mがもっとも高く、高級住宅地パッシー70m、モンパルナス65m、ビュット・カイユ63m、モンターニュ・サント・ジュヌヴィエーヴ61mなどが連ねています。ビュット・ショーモンやビュット・カイユのビュット butteは小高い丘、モンターニュ Montagneは山という意味で、地区や通りの名前にも、地形が反映されています。
パリで、ヴェリブ Vélib'と呼ばれるレンタル自転車のシステムが導入されていることを、ご存知の方も多いでしょう。街のあちこちにステーションがあり、どこで借りても、どこで返しても自由なのですが、問題となっていたのは、上述した坂道や丘のふもとにあるステーション。わざわざ自転車を借りて坂道を登ろうとする人はいないですから、利用者が少なかったのです。
そこでパリ市が考えたのは、“ボーナス・ヴェ・プリュス Bonus V+”というシステム。標高60m以上にある一部のステーションで自転車を借りて、より高いステーションで返すと、無料レンタル時間である30分に、15分が追加されます。“V’+”というマークが目印で、モンマルトルの丘のふもとにある地下鉄アベス駅、ビュット・ショーモン公園周辺など、約100のステーションにあるそうです。このシステムができてから利用者も増えていて、評判は上々。パリの坂道は、ヴェリブ利用者の“ブレーキ”にはなっていないようですね。
坂道の回りには不思議と、パリらしい風情や哀愁がただよっている気がします。さらに、モンマルトルの丘もビュット・ショーモン公園も、坂道を登りきると、絶景のパリの風景が目の前に広がるのですから、苦労もむくわれるというもの!ちなみに、パリでもっとも低い場所は、セーヌ川。水面の平均の高さである26mとされています。
〈文・三富千秋/フランス パリ在住〉


