バターやチーズは、フランスが世界に誇る乳製品ですが、こうした乳製品のなかで、フランスでしか味わえないのが、レ lait、つまり牛乳。単に「レ」と表示してある場合は、牛の乳をさし、羊やヤギなど牛以外の乳の場合は、レの後に必ず動物名が表示されています。フランスでは牛乳を、日本と同様に、朝食時に飲んだり、シリアルにかけたり、もちろん料理や菓子づくりにも使います。
フランスのスーパーマーケットでは、大別すると2種の牛乳が売られており、1種は日本同様、冷蔵庫に並べられていますが、もう1種の牛乳は驚くべきことに、室温の状態で販売されているのです。6本パックを包装しているビニールを、バリバリと大胆に破いて、1本取り出しているマダムの姿にも、最初は驚いたものですが……。さて、常温保存のナゾの答えは、フランスでは、UHT法と呼ばれる超高温瞬間殺菌を施して、常温で長期保存ができるロングライフ牛乳が一般的だから。日本で主流を占める加熱殺菌法の牛乳の賞味期限は、冷蔵庫に保存して7日ほどですが、UHT法では常温で3カ月と、ぐんと長くなります。もちろん開封後は早めに飲まなくてはなりません。ロングライフ牛乳のおかげで、フランス人家庭は一度に6本、12本とまとめ買いして、保存しておくことも多いのです。
さらに牛乳の種類は、乳脂肪分の割合によっても3つにわかれます。1リットルにつき36gの乳脂肪分を含んだ牛乳がレ・アンティエ lait entier、乳脂肪分15.45gを含むとレ・エクレメ lait écrémé、さらに3.09gまで減らしたものがドゥミ・エクレメ demi-écrémé。健康志向の高まりや、体のラインを気にする人が増えている影響もあって、フランス人の8割がドゥミ・エクレメを選んでいるそう。ちなみに、店頭では牛乳の隣にはよくレ・リボ lait ribotが並んでいますが、これは牛乳ではなく、軽い酸味のある発酵ミルクバター。バターを作る際に、クリームを分離したあとに残る脱脂乳バターミルクを発酵させたもので、バターの名産地ブルターニュ地方でよく見られます。
パッケージは、手で押すとふにゃりとへこんでしまう、やわらかい白いプラスチック瓶が主流。紙製より保存期間が長いのだそうです。キャップが付いていて、開封後も、冷蔵庫のなかで倒して保存できるので、便利です。最近は環境問題の高まりに応じて、紙パックも急増中。ただし日本と違って興味深いのは、紙パックの回収の仕方。日本では、飲み終わった紙パックは、洗って、切り開いて、乾かして、回収ステーションに持参しますが、フランスの紙パックは、折りたたんで、回収ボックスに入れるだけ。「洗う必要はありません Inutile de rincer」の注意書きがわざわざ書いてあるのです。専門のリサイクル・センターでまとめて洗った方が水の無駄がない、という考えからだとか。消費者としては、フランス式がラクではありますが、どちらがよりエコなのでしょうか?
フランスでも牛乳離れが進み、酪農農家たちは牛乳の買取価格アップを求めてフランス政府に抗議をしたりと、牛乳をめぐるニュースは明るいものばかりではありません。とはいえ、スーパーマーケットの牛乳コーナーの広さや、種類の多さを見ると、牛乳の重要性とともに、フランス人がいかに乳製品を多く食生活にとり入れているかを実感させられるのです。
(文・三富千秋/フランス パリ在住)

